「ありがとう」を桜乃そらとピアノで。優しい歌声で、感謝を届ける一幕
「ありがとう」という言葉に込められた感謝の気持ちを、桜乃そらさんの優しい歌声とピアノで届けたい。
今回は、そんなイメージから歌声を作っていきました。
桜乃そらさんの柔らかさを生かしながら、原曲で聴き馴染みのある歌い回しも取り入れ、一つひとつの言葉が自然に届くように調整しています。
特に「笑っていたいから」では、音符そのものを変えるのではなく、音素の長さを細かく調整しました。
EQやリバーブも含めて、今回は実際の制作画面を交えながら、「ありがとう」をどのように声とピアノの一幕へ仕上げていったのかをご紹介します。
桜乃そらの優しい声で、感謝を伝える
今回のVocal Styleは、次のように設定しました。
| Vocal Style | 設定値 |
|---|---|
| Sweet | 40% |
| Soft | 25% |
| Adult | 50% |
| Breath | +0.30 |
歌唱範囲はG3〜C5です。
Adultを50%としながら、Sweetを40%、Softを25%加えています。
今回大切にしたかったのは、「ありがとう」という言葉を、そらさんの優しい声で届けること。
柔らかさを持ちながらも、言葉がぼやけてしまわないように、実際の歌声を聴きながらバランスを整えていきました。
「おう」と促音「っ」を、音素で整える
今回も、これまでの制作で何度か行ってきた「おう」に関係する発音を調整しています。
また、促音の「っ」についても、そのままでは長さや間の取り方が気になるところを音素側で整えました。

「おう」や「っ」は日本語としては短い要素ですが、歌になると、その長さによって言葉の聞こえ方が変わることがあります。
今回はこうした箇所が複数あったため、一つずつ聴きながら調整しています。
ただ、すべての発音を細かく作り直しているわけではありません。
そのままで自然に聞こえるところは残し、気になったところだけに手を加えています。
「笑っていたい」の「い」を、あえて残す
今回、特に細かく調整したのが「笑っていたいから」というフレーズです。
原曲の歌い回しを聴くと、「てい」の「い」はかなり小さく、
「わらってたーいからー」
に近い流れで歌われています。
このニュアンスへ近づけるだけなら、Synthesizer Vに入力するノートの歌詞を、最初から「てい」ではなく「て」にしてしまう方が簡単です。
今回は、あえてそうしませんでした。

個人的には、「笑ってたい」と「笑っていたい」は、似ているようで少し違う言葉だと感じています。
そこで「い」の音素を完全には消さず、極端に短くしました。
ほとんど「てー」と聞こえながらも、よく聴くとわずかに「てぃ」と感じられるくらい。「い」という音の気配だけを残すような調整です。
続く「たい」では、「た」を少し長く感じられるようにしています。
原曲で聴き馴染みのある言葉の流れを取り入れながら、「笑っていたい」という言葉も残す。
その間を探しながら、そらさんの歌い方として整えていきました。
ピアノは78 BPM、Key Cで制作
ピアノはKey C、Tempo 78 BPMで制作しています。
使用する音域はG0〜A5です。
Velocityは普段の基準と同じく、
| 強弱 | 右手 | 左手 |
|---|---|---|
| mp | 72 | 72 |
| mf | 80 | 80 |
| f | 88 | 84 |
を基準にしています。
これは楽譜に記されたmp、mf、fなどの強弱をMIDI上で表現するための基準値です。
今回は楽譜に記されたヘアピンについても、音の流れに合わせてVelocityを細かく変化させました。
クレッシェンドでは少しずつ強く、デクレッシェンドでは少しずつ弱く。
一つの数値から突然別の数値へ切り替えるのではなく、実際に聴いたときにフレーズとして強弱がつながるよう、一音ずつ整えています。
※ピアノロールの画面には使用楽譜に基づく音符情報が含まれるため、ここでは掲載していません。
EQは、実際の設定画面を見ながら
今回はEQの設定値をすべて表へ書き出すのではなく、実際に使用したPro EQ³の画面を掲載します。
細かな数値は画像で確認できるため、ここではどのような方向で音を整えたのかを中心にご紹介します。
桜乃そらのEQ

そらさんの歌声は、柔らかな響きを生かしながら、ピアノの中でも言葉が自然に届くように整えています。
低域を整理しながら、必要なところには少し明るさを加える形です。
大きく声質を作り変えるというより、Vocal Styleで作った歌声を生かしながら、今回のピアノと合わせて聴いたときに気になったところを少しずつ調整しています。
ピアノのEQ

ピアノも、特定の帯域を大きく削って別の音へ変えるのではなく、実際に歌声と合わせながら必要なところを整えています。
今回のピアノはG0という非常に低い音まで使用していますが、Low Cutは20 Hzに設定し、低い響きそのものは残しています。
そのうえで中低域や中高域を少しずつ調整し、声とピアノだけで一曲を聴いたときのバランスを作りました。
ピアノを広げ、そらさんは中央へ
初期フェーダーとPanは、次の設定です。
| Track | Fader | Pan |
|---|---|---|
| Piano | 0 dB | L65 / R65 |
| 桜乃そら | -4 dB | Center |
ピアノは左右へ広げ、そらさんの歌声は中央に配置しています。
二音一幕では、ピアノと歌声を単純に同じ場所へ重ねるのではなく、左右の広がりや残響も使いながら、それぞれが自然に聞こえる場所を探しています。
今回も、広がりを持ったピアノの中央から、そらさんの歌声が届くような配置にしました。
リバーブで、小さな演奏空間を作る
リバーブにはRoom Reverbを使用しています。
今回は設定値を一覧にするのではなく、実際の設定画面を掲載します。

Send量は、
- ピアノ:-16 dB
- 桜乃そら:-20 dB
です。
ピアノ側へ少し多めに残響を送り、そらさんの歌声は比較的近い位置に残しています。
リバーブそのものを強く聴かせるというより、声とピアノが同じ場所で演奏されているような空間を作るために使用しています。
残響にもEQをかける
リバーブの後段には、さらにEQを入れています。

今回のReverb EQでは、低域を180 Hzから、高域を6.5 kHzから落としています。
元の歌声やピアノではなく、あくまで残響として返ってくる音の帯域を整理するためのEQです。
低域まで残響させることで音が膨らみすぎたり、高域の残響が必要以上に目立ったりしないように、上下を絞っています。
残響そのものを聴かせるのではなく、演奏が行われている空間を感じられる程度に。
今回も、声とピアノの直接音を中心にしながら、その周囲へ自然な奥行きを加えるように調整しました。
リミッターは、最終段の安全策として
マスターにはリミッターを入れています。
設定は、
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| Gain | +5 dB |
| Ceiling | -1 dB |
| Threshold | -1 dB |
| Mode | B |
| Attack | Normal |
| Release | 400 ms |
です。
今回も、リミッターで強くピークを押さえ込み、音量を均一にすることを目的にはしていません。
歌声とピアノが持っている強弱を残しながら、最終段の安全策として使用しています。
Releaseは400 msとしていますが、ここは制作当時に決めた値をそのまま使用しています。
最後にラウドネスを確認
仕上げた音源は、Youlean Loudness Meter 2で確認しています。

主な測定値は、
- Integrated:-17.2 LUFS
- Loudness Range:6.0 LU
- True Peak Max:-2.5 dBTP
となりました。
画像ではこのほか、Dynamics(PSR)9.4 LU、Avg. Dynamics(PLR)14.8 LU、Momentary Max -11.3 LUFS、Short-Term Max -13.5 LUFSも確認できます。
音量を大きく揃えることよりも、静かなところと少し前へ出るところ、その両方を残すことを大切にしています。
声とピアノだけだからこそ、その強弱も一曲の表情として残したまま仕上げました。
「ありがとう」を、優しい歌声で
今回の「ありがとう」で中心に置いたのは、とてもシンプルなものでした。
感謝の気持ちを、桜乃そらさんの優しい歌声で届けること。
Sweet、Soft、Adultを組み合わせた歌声を中心に、必要な発音だけを音素で調整しました。
特に「笑っていたいから」では、原曲の歌い回しを参考にしながらも、「い」を完全には消さず、ごく小さく残しています。
「笑ってたい」ではなく、「笑っていたい」。
ほんの短い一音ですが、言葉として残したかった部分です。
ピアノでは楽譜に記された強弱やヘアピンをVelocityへ置き換え、歌声の周囲に広がるように演奏を整えました。
大きな演出を加えるのではなく、歌詞に込められた感謝の気持ちが、そらさんの声とピアノから自然に届くように。
そんな一幕として、お聴きいただけたら嬉しいです。
声とピアノで、ひとつの物語を。
二音一幕
🎼 使用楽譜
電子楽譜カノン