音のこと

ピアノEQのLC設定で低音が痩せる原因|見落としやすい低音の重要性

ピアノ、楽譜、EQ画面を表示したパソコンが並ぶ音づくりの制作環境
KOSHIKA

ピアノにEQをかけたあと、

  • 低い音を弾いているはずなのに、音が軽く感じる
  • 高い「ピーピー」という音だけが耳につく
  • 高域やリバーブを調整しても、違和感が消えない

そのようなことがあります。

原因は一つとは限りません。

しかし場合によっては、LC(ローカット)によって、演奏に必要な低音まで弱めていることが関係しています。

二音一幕として活動する前、私はピアノのLCを、おおよそ70Hz前後に設定することが多くありました。

Studio OneでEQを開いた際、私の環境ではLCが75Hz付近に設定されていたこともあり、そのあたりが一般的な出発点なのだろうと考えていたためです。

また、ピアノの雰囲気を大まかに伝えてAIへEQの案を求めた場合も、70Hz前後のLCを提案されることがあります。

私自身も、それを一つの基準として調整していました。

しかし、制作を重ねる中で、すべての曲へ同じLCを使うと、必要な低音まで弱めてしまう場合があると気付きました。


低音を弾いているのに、なぜか音が軽い

きっかけは、ある作品のピアノを調整していたときに感じた違和感でした。

楽譜では、左手がしっかりと低い音を演奏しています。

それにもかかわらず、実際に聴くと低音の存在感が薄く、ピアノ全体が軽く感じられました。

低い音を弾いているはずなのに、低く厚みのある音として聴こえない。

そこで、その曲で使われている最も低い音を楽譜で確認し、その音の周波数を調べました。

すると、設定していたLCによって、不要な低域だけではなく、演奏に必要な低音の成分まで弱めている可能性が見えてきました。

LCを見直し、最も低い音を不自然に削らないよう調整したところ、ピアノの印象が大きく変わりました。

それまで軽く感じられていた音に低音の土台が戻り、低く厚みのある音として聴こえるようになったのです。

この経験から私は、ピアノのLCを固定した数値で考えるのではなく、その曲で実際に使われている最も低い音から考える必要があるのではないかと思うようになりました。


気になっていた「ピーピー」という音

その頃、「時を刻む唄」のピアノには、どうしても気になる音が残っていました。

演奏の一部で、高い「ピーピー」という音が耳についたのです。

当初は、高い音として聴こえている以上、高域側に原因があると考えました。

そのため、

  • 高域側のEQ
  • リバーブ
  • そのほかのエフェクト

などを何度も調整しました。

調整によってピーピーという印象が少し軽減することはありました。

しかし、完全には消えません。

音量を抑えたり、高域を弱めたりすれば目立ちにくくはなるものの、根本的な違和感が解決したとは感じられませんでした。

その後、別の作品で、最も低い音に合わせてLCを見直したことで、軽かった低音に厚みが戻りました。

その変化を聴いたとき、ふと一つの可能性を考えました。

「時を刻む唄」のピーピーという音も、実は高音そのものが問題なのではなく、低音が失われて軽い音になっているのではないだろうか。

そこで、「時を刻む唄」の楽譜と音源を照らし合わせました。

すると、ピーピーという違和感が生じていた場所は、左手でその曲の最も低い音を演奏しているタイミングと重なっていました。

高い音が気になっていたため、それまでは高域側ばかりを疑っていました。

しかし実際には、低いピアノ音を支える成分がLCによって弱まり、高い成分だけが目立っていた可能性があったのです。


最も低い音を確認してLCを修正する

そこで、「時を刻む唄」で使われている最も低い音を確認し、その音の周波数を調べました。

そして、その音を不自然に弱めないよう、ピアノのLCを設定し直しました。

すると、それまで「ピーピー」と感じていた音の印象が変わりました。

高い成分を強く削ったわけではありません。

失われていた低音の土台が戻ったことで、高い成分も低音と一体になり、自然で美しい一つのピアノ音として聴こえるようになったのです。

つまり、ピーピーという音そのものが消えたわけではありません。

低音の土台が戻ったことで、それまで単独で目立っていた高い成分が、本来のピアノ音の中へ収まった。

それが、実際に起きた変化に最も近いと思います。


なぜ低音を削ると、高い音が目立つのか

ピアノの低い音は、一つの低い周波数だけで構成されているわけではありません。

音の高さや重さを支える低い成分だけでなく、それより高いさまざまな倍音も含まれています。

低い音を弾いているときでも、耳には高い成分が同時に届いています。

通常であれば、それらは低音の土台と一体になり、一つの自然なピアノ音として聴こえます。

しかし、LCによって低い成分が大きく弱められると、低音の重さや厚みだけが失われ、高い倍音は比較的残ります。

その結果、

  • 低い音を弾いているのに軽く聴こえる
  • 高い音だけが浮いて聴こえる
  • ピーピー、キンキンとした別の音のように感じる

といった違和感につながる場合があります。

高い音が増えたのではありません。

低い成分が減ったことで、高い成分が相対的に目立つようになったと考える方が近いと思います。


LCは固定値ではなく、最も低い音から考える

現在、二音一幕では、ピアノのLCをすべての曲で同じ数値にはしていません。

まず、楽譜を確認し、その曲で実際に使われている最も低い音を調べます。

そのうえで、

  • 最も低い音を支える成分まで弱めていないか
  • LCの傾きが必要な低音へ影響していないか
  • 低域を残したことで、不要な濁りや振動が増えていないか
  • ピアノ全体の厚みや奥行きが自然に感じられるか

を聴きながら調整します。

ここで大切なのは、

ピアノのLCは必ず30Hzにする

あるいは、

ピアノのLCは必ず70Hzにする

というように、一つの数値を正解にしないことです。

曲によって使われる音域は異なります。

左手で低い音を多く使う曲もあれば、それほど低い音を使わない曲もあります。

使用しているピアノ音源や演奏の強さによっても、低域の響き方は変わります。

そのため、同じ設定がすべての曲に合うとは限りません。


最も低い音と同じ周波数に設定すればよいわけではない

もう一つ注意したいのは、LCは設定した周波数より下を、完全に垂直に切り落とすものではないということです。

LCには傾きがあります。

そのため、設定した周波数の周辺や、それより上の成分にも影響が及びます。

例えば、曲の最も低い音がある周波数だったとしても、LCをその周波数と同じ位置へ設定すると、その音の成分はすでに弱くなり始めている可能性があります。

したがって、

最も低い音が何Hzだから、LCも同じHzにする

という単純な決め方ではありません。

最も低い音は、あくまで調整を始めるための重要な手掛かりです。

そこからLCの位置や傾きを変えながら、実際の音を聴いて判断します。

最も低い音から範囲を絞り、最後は耳で決める。

現在は、この考え方で調整しています。


歌声のLCは、ピアノとは少し考え方が違う

歌声については、ピアノほど最も低い音だけを基準にはしていません。

歌声の低域には、

  • 声の厚み
  • 息の成分
  • 歌唱スタイル
  • 声の軽さや重さ
  • ピアノとの重なり方

などが関係します。

二音一幕では、低く厚みのある声であれば70Hz前後、比較的軽い声であれば100Hz前後を出発点にすることがあります。

ただし、これも固定値ではありません。

声が重く感じられる場合は少し高めから調整し、声が軽くなりすぎる場合は低域を残す方向へ戻します。

ピアノには、楽譜上の最も低い音という比較的分かりやすい手掛かりがあります。

一方、歌声では、音程だけではなく声質や息遣いも印象に大きく影響します。

そのため、歌声のLCは、声の厚みを保ちながら、ピアノと自然に重なる位置を聴いて探しています。


よくある違和感

Q. EQをかけたら「ピーピー」という音が気になります

原因は一つではありません。

高域側のEQやリバーブ、ピアノ音源そのもの、エフェクトなどが影響している場合もあります。

ただし、LCによって低音の土台が弱まり、高い成分だけが相対的に目立っている可能性もあります。

私自身も、最初は高域側ばかりを調整していました。

しかし、別の作品で低音のLCを見直した経験から、「高い音ではなく、低音が失われているのではないか」と考えました。

楽譜と音源を確認すると、違和感が生じていた場所は、曲の最も低い音を演奏しているタイミングと重なっていました。

同じような症状がある場合は、まず、その曲で使われている最も低い音を確認し、LCが必要な低域まで弱めていないか見直してみると、原因を探す手掛かりになるかもしれません。


Q. ピアノのLCは何Hzに設定すればよいですか

すべての曲に共通する数値はありません。

曲の中で使われている最も低い音、LCの傾き、使用しているピアノ音源、演奏の強さなどによって変わります。

最も低い音を確認したうえで、低音の厚みと不要な濁りの両方を聴きながら調整する必要があります。


Q. 低音はできるだけ残した方がよいですか

低音を多く残せば、必ず良い音になるわけではありません。

演奏に使われていない極端に低い成分や、音源に含まれる不要な振動まで残すと、音が濁ったり、作品全体が重くなりすぎたりする場合があります。

必要な低音は残しながら、不要な低域は整理する。

その境界を探すことが、LCの役割だと考えています。


Q. 高い音が気になるときは、高域を削ればよいですか

高域を削ることで、耳につく音が軽減する場合はあります。

しかし、高い音が目立っている原因が、必ずしも高域そのものにあるとは限りません。

低音の土台が弱くなったことで、高い成分が相対的に目立っていることもあります。

高域だけを調整しても違和感が残る場合は、低域側の設定や、違和感が生じる位置の楽譜も確認してみると、別の原因が見つかる可能性があります。


まとめ

二音一幕として活動する前、私はピアノのLCを70Hz前後に設定することが多くありました。

一般的な出発点としては、その数値が役立つ場合もあると思います。

しかし、実際の曲で使われている音を確認せず、すべての作品へ同じLCを使うと、演奏に必要な低音まで弱めてしまうことがあります。

その結果、

  • 低音を弾いているのに音が軽い
  • ピアノの厚みや奥行きが感じられない
  • 高い成分だけが不自然に目立つ
  • ピーピー、キンキンとした音が気になる

といった違和感につながる場合があります。

私自身も最初は、高い「ピーピー」という音に対して、高域側のEQやリバーブを調整していました。

しかし、別の作品でLCを見直し、低音の厚みが戻った経験から、「時を刻む唄」の違和感も、低音が失われているためではないかと考えました。

楽譜を確認すると、ピーピーという音は、曲の最も低い音と同じタイミングで鳴っていました。

そこで最も低い音の周波数を確認し、LCを見直したところ、低音の土台が戻り、自然で美しいピアノ音へたどり着きました。

現在、二音一幕では、

その曲で使われている最も低い音を手掛かりにし、必要な低域と不要な低域の境界を耳で探す

という考え方で、ピアノのLCを調整しています。

EQは、決まった数値を再現するためだけのものではありません。

その曲に必要な音を残し、声とピアノが自然に響く場所を探すための道具。

今回の経験を通して、今はそう考えています。

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